2017年06月26日

漢方にも流派があるのをご存じですか?

華道や茶道など、日本古来の伝統的なものの多くには流派があります。

それぞれの特徴や考え方が異なります。

あまり知られていないことですが、実は「漢方」にも流派があります。

3つの流派があり、それぞれ

@後世方(ごせほう)派
明の時代の中国医学が日本に伝わり、日本独自の発展をとげたもの。陰陽五行説を重んじる理論的な流派です。

A古方(こほう)派
後世方が理論にとらわれすぎて効果が十分に発揮されなくなった時代に、後漢時代の古い医学書である傷寒論(しょうかんろん)・金匱要略(きんきようりゃく)を重視し実務を重んじた流派。

B折衷(せっちゅう)派
後世方と古方の良いとこどりしたらいいじゃん、という流派

と呼ばれています。

ちなみに寿元堂は折衷派。

師匠の師匠である柴田良治先生は、幕末から明治にかけての最高の漢方医と言われている浅田宗伯先生(折衷派)の流れをくんでおられた方で、正統な漢方を受け継ぐ数少ない医師の1人でした。

最近、寿元堂薬局内がざわざわしたことがあるんです。

どうやら今は上記の3つの流派に加えて「中医学派」というものが存在するそうで・・・漢方の流派が4つあるとされているようです。

中医学派というのは、現代の中医学の考え方で漢方薬を使用するそう。

中華民国時代に中国でも近代化を図ろうとする流れがあり、それまでの中国の伝統医学を廃止する方針がうちたてられたそうです。

その後1950年代に毛沢東による文化大革命によって、中国のそれまでの伝統医学と西洋医学を融合させようと整理したものが現代の中医学です。
(※漢方の起源である古代の中国医学と、現代の中医学は異なります)

現代の中医学は1度整理されたが故に、理論はとてもわかりやすく面白い。

ですが、現代の中医学は成立する際に急遽体系づけられたものであり、国際中医師などの資格のとれる中医学院の教材をつくる際に多数決的に理論がまとめられたそうで、今でも多くの矛盾を含んでいるという問題点もあるようです。

※漢方も科学的に証明することが難しいことが多く、問題点は多々あるようですが・・・

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私は「中医学派」があるって聞いた時に「それって漢方じゃなくて中医学なんじゃないの?」って思ってしまいました。

中医学の考え方で中薬(ちゅうやく・中医学で用いられる薬のこと)や漢方薬を選ぶなら「中医学」って言えばいいと思うんです。

というのも、そもそも漢方は日本人の体質に合わせて発展した日本の伝統医学です。

漢方薬本来の効果を発揮するためには、昔から日本でよく用いられてきた漢方の方法論で漢方薬を選ぶことが大切だと私は思います。

ただでさえ教科書通りにいかない漢方の世界ですから、現代の中医学のように理論的に綺麗に整理されたものでは実際の現場で成立しないことも多い。

「漢方は理屈ではない」というのが、師匠の口癖です。

私が師匠のもとで漢方を勉強し始めた頃は、「なんてわけのわからない医学だ」とよく思ったものです。

薬を選ぶ者の経験や考え方、知識によって個人差が大きく、「西洋医学に比べて、なんていい加減な医学なんだ」と思ったこともあります。

師匠は薬を選ぶ時、よく「ぽっと薬がおりてくる」とのたもうております。

このように第六感で薬を選ぶタイプの師匠なので、私が余計に「わからん・・・」と感じたのかもしれませんが・・・。

これ読んだら怒られるかな?(笑)

このような迷える子羊ちゃん状態の時に、周りに師匠がおらず漢方に詳しい方とも巡り会えなければ、私も理論的でわかりやすい中医学を伝統的な漢方だと思い込み中医学派になっていたかもしれません。

実際に自分が漢方薬を選ぶ立場になって、漢方の方法論で薬を選んでも教科書通りにいかないことも多いと本当に身にしみて感じています。

理論的でわかりやすい現代の中医学は面白いですが、早々に限界を感じていたのではないかなぁと思います。

しかし、中医学も経験を積んで学べば学ぶほど、理論よりも直感や経験を重んじる機会が増えていくのではないでしょうか?

「教科書から外れることがある」「自分の感覚で教科書から外れたことをした結果良い方向にいった」ということはきっと漢方の世界だけではなく、どんな世界でも共通することじゃないのかなと個人的に思っています。

それぞれの世界のプロフェッショナルの方々、いかがでしょうか?

長文でつらつら書いてしまいましたが、今日の記事で誤解をしていただきたくないのが中医学派の漢方を否定しているわけではありません。

先にある3つの流派でも、考え方や見立てによって選ぶ薬が異なることもあります。

また、漢方と西洋医学、中医学の優劣を問いたいわけでもありませんし、対立するものではないと思っています。

漢方薬、西洋薬、中薬などの薬にはそれぞれ得意分野、不得意分野があるので、それぞれの長所をうまく利用して悩んでいる方が良い方向に向かうのが、どの立場であれ1番なんです。

ただ、色んなことを知った上で納得してお薬を試していただきたい。

それだけです。

ですが、何が正しい情報なのかわかりにくい時代です。

漢方の看板をかかげている病院や薬局を選ぶ際に「どこの流派ですか?」と尋ねてみるのも、漢方を試す場所を探す1つの手がかりになるかもしれません。

posted by なつめ at 15:29| 漢方

漢方薬は全て中国で考案?

もう7月というのに朝晩はひんやり・・・

今朝、うちの猫が「くしゅんっ」とくしゃみをしておりました(>_<)

悪化せずに早く元気になってくれればいいのですが・・・

皆様もお気をつけください!!

さて、今週もリビング新聞の漢方よもやま話の更新です(29/6/24号)

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漢方薬は全て中国で考えられたもの―と誤解している人は多いようです。

はるか昔から中国の医学と共に薬が日本に伝わり始めました。

そして、少しずつ日本独自の発達をし、江戸時代の頃から一気に日本化が進みました。

この日本独自の発達を続けてきた医学が現在の漢方です。

漢方は日本独自のものになり、日本で作られた漢方薬も少なくありません。

そのうちのいくつかを紹介しましょう。

十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)は以前のコラム(4月22日号)で紹介したように、江戸時代、全身麻酔による世界初の乳癌摘出手術を成功させたことで知られる外科医・華岡青洲によって考案され、今でも皮膚症状によく使用されます。

華岡青洲は他に紫雲膏(しうんこう)や中黄膏(ちゅうおうこう)などの膏剤も作りました。

紫雲膏は、中国の明の時代の医師、陳実功(ちんじつこう)が著した書「外科正宗(げかせいそう)」に記載される潤肌膏(じゅんきこう)を基に考案されました。

ひび、あかぎれ、やけど、切り傷、湿疹、皮膚炎などに使用されます。

中黄膏は、黄連膏(おうれんこう)を基に考案され、はれ物、おでき、あかぎれ、湿疹などに使用されます。

特に患部が熱をもつ場合に良いとされます。

漢方薬に関する誤解は意外と多いのです。

少しでも誤解が解け、漢方の知識をきちんと知ってほしいものです。

(北山 良和)
posted by なつめ at 12:25| リビング新聞−よもやま話−

2017年06月20日

原料の成熟度で効果が変わる!

最近、薬局を閉める19時でも日が落ちず明るくて夏だなぁと感じます。

明日、6月21日は夏至。

1年で最も日照時間が長い日です。

自然の実りに必要な日照時間が長いこの日に、神様に豊作をお祈りする風習が残っているところもあるんだそうです(*^_^*)

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さて、今週もリビング新聞の漢方よもやま話の更新です(29/6/17号)

湿気が多くなるこの時期、胃や腸の調子を崩してしまう人が少なくありません。

食欲不振や嘔気(おうき)などの症状がある人によく用いられる六君子湯(りっくんしとう)という漢方薬があります。

六君子湯は、人參(にんじん)、白朮(びゃくじゅつ)、茯苓(ぶくりょう)、甘草(かんぞう)、陳皮(ちんぴ)、半夏(はんげ)の6種類の生薬に、生姜(しょうきょう)、大棗(たいそう) を加えた薬です。

このうち、陳皮(ちんぴ)という生薬は、成熟したウンシュウミカンの皮を乾燥させたもので、古いほど良品とされています。

陳皮は七味唐辛子にも含まれており、私たちの身近にある食材の一つでしょう。

陳皮には、胃の調子を整える作用や痰(たん)を減らす作用、気の巡りをよくする作用などがあるとされており、多くの漢方薬に含まれます。

一方、未成熟なウンシュウミカンの皮を乾燥させたものは青皮(せいひ)という別の生薬になります。

青皮は陳皮よりも気の巡りをよくする作用が強いとされています。 

青皮を構成生薬に含む漢方薬には、柴胡踈肝湯(さいこそかんとう)という漢方薬があります。

この薬は、ストレスなどで気の巡りが悪くなり、イライラしたり胸や脇腹が張って痛みを感じる人によく用いられます。

このように、同じ原料でも収穫の時期によって、生薬を使い分ける先人たちの知恵と経験には驚かされるばかりです。

(北山 恵理)



posted by なつめ at 17:49| リビング新聞−よもやま話−