2019年02月23日

胃腸の不調を訴える人に…

ツムラの漢方薬の中で出荷量が1番多いらしい大建中湯。

出荷量が多いので無難に使用できる薬と思われがちですが、お腹に熱をもっている場合などに使用してしまうと逆効果。

結構な悪影響が出てしまいます。

名前をよく聞く薬でも、体質や症状に合わせたものを試さないとダメです。

さて、大建中湯について今週のリビング新聞の漢方よもやま話の更新です(31/2/23号)

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まだまだ風邪をひいたり体調を崩す人が多いこの時季。

また、冷えたことが影響して、胃腸の働きが弱り不調を訴える人も多いようです。

冷えたおなかを温めるときには、大建中湯(だいけんちゅうとう)という漢方薬がよく用いられます。大建中湯は、山椒(さんしょう)・乾姜(かんきょう)・人参(にんじん)・膠飴(こうい)の4種類の生薬(しょうやく)から構成されます。  

この薬は、中国・後漢の時代に張仲景(ちょうちゅうけい)が著したとされる医学書「金匱要略(きんきようりゃく)」に収載されています。

手足やおなかが冷えて、ガスがたまって苦しく、便秘傾向にある人に適することが多い薬です。

激しい場合には、嘔吐(おうと)して、痛みがひどく腹部に手を触れることすらできないような症状にも用いられます。

最近では、このような大建中湯を使う目標となる症状が腸閉塞の時に生じる症状と似ていることから、西洋医学の現場でも登場することの多い漢方薬となりました。

外科手術の後に、腸閉塞の予防で大建中湯を服用するのです。

しかし、誰にでも大建中湯が適するとは限りません。

大建中湯のほかにも、腹部を温めて不調を改善する漢方薬は、人参湯(にんじんとう)、真武湯(しんぶとう)、小建中湯(しょうけんちゅうとう)など多くあります。

漢方の専門家に相談して最適な漢方薬を利用しましょう。

(北山 恵理)
posted by なつめ at 00:00| リビング新聞−よもやま話−

2019年02月18日

自律神経失調症と肝臓は関係しますか

古代の中国の思想に五行説というものがあります。

五行説はいろいろなものと関連しており、人の体も例外ではありません。

が、五行説に出てくる五臓と、私たちの体内の臓器は全く別物です。

詳しくは、今週のリビング新聞をどうぞ。

漢方Q&A(2019/2/16号)の更新です。

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Q.自律神経失調症と肝臓は関係しますか?

 イライラして動悸(どうき)や不眠があり、自律神経失調症といわれました。ある人に肝臓が悪いからだといわれましたが、どうでしょうか。(54歳、女性)

A.五行説の肝は肝臓のことではありません

 治したい症状を相談すると、西洋医学の検査では異常がないのに、肝臓や腎臓が悪いといわれたという人がいます。あなたもその一人ですね。

 さて、古代の中国の思想に五行説というものがあります。万物を木、火、土、金、水の5つの要素に分けて、お互いに影響し合うという考え方で、政治や宗教を含めて、すべての分野に取り入れられた時代があります。

 五行説は医学にも影響を及ぼし、内臓全体のことを五臓六腑といい、五臓は肝、心、脾、肺、腎に分けられました。

 これらは、肝臓、心臓などと西洋医学で内臓の名前に使われているため誤解されやすいのですが、漢方では、体のさまざまな働きを振り分けて名前を付けたもので解剖学的な臓器のことではありません。「肝、心、脾、肺、腎」と「肝臓、心臓、脾臓、肺臓、腎臓」は同じものではないのです。

 五臓の肝は、ほぼ西洋医学の肝臓の働きに加えて精神の活動に大きく影響し、感情や自律神経の働きと関係しています。 また、人の感情は、五行では、肝、心、脾、肺、腎を、それぞれ怒、喜、思、憂、恐と関連づけて五情といいます。

 ですから、イライラして怒りっぽくなることを漢方では肝の病ということがあります。

 ちなみに、肝は疳(かん)や癇(かん)につながり、疳が強いとか、癇に障るなどといい、共に怒りやすいことですね。

 漢方には癇症という病名もあります。古くは癲癇(てんかん)のことでしたが、後に怒りっぽいことやいら立ちやすいことをはじめとして、物事が気になったり、ささいなことで悩んだりなど、感情の偏りを広く意味するようになりました。これらは解剖学の肝臓の機能とは直接関係はありませんので、検査もしないで肝臓が悪いといわれたことは気にしないでよいでしょう。

 肝と肝臓に限らず、五臓と西洋医学の臓器を混同することは避けたいものです。

 五行説と漢方の関わりですが、漢方の基になった明の時代(1368〜1662)の中国医学には五行説が取り入れられていました。

 江戸時代に中国医学が変革して日本独自の医学である漢方になっていく過程で、五行説を重視した後世派(ごせいは)よりも経験を重んじた古方派という流派が効果を上げる時代がありました。後に、両派の長所を取り入れた折衷派が漢方の主流になりましたが、五行説は以前ほど重んじられなくなりました。

 現在の漢方でも、やはり折衷派が主流ですが、経験を重んじた効果的な漢方薬の使い方に加えて、五行説の一部が活用されています。

(北山進三)

posted by なつめ at 12:02| リビング新聞−漢方Q&A−

2019年02月02日

漢方薬の長所と短所について

関東では雪の予報が出ており、岡山でも北の方は一面真っ白だったそうで・・・。

寒いです(;ω;)

ですが明日は節分!

1月も終わり寒い冬もあっという間に過ぎていくことでしょう。

流行のインフルエンザにかかりませんよう、ご注意を〜!!

今週もリビング新聞(岡山)の「ここが知りたい漢方」の更新です(2019/2/2号)

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「漢方薬は体に優しい」「漢方薬は副作用が少ない」などという、良いイメージが多い漢方薬ですが、必ずしも良いことばかりではありません。

今回は、漢方の長所と短所について述べてみましょう。

代表的な長所には、次のようなものが挙げられます。

@西洋医学で対応しにくい病気の中に、漢方が効果を発揮するものが多くあります。

A副作用の心配が少ないといえます。

ただし、日本古来の漢方医学の考え方に従い、漢方薬を適切に選んだ場合に限ります。

B西洋薬とは異なり、症状を一時的に抑えるだけでなく、体を整えて自己治癒力を高めたりして、不都合な症状の根本的な改善に役立ちます。 

これらの漢方の長所は、病気で悩む人にとって大きな価値を持つはずです。

特に、西洋医学では治療が難しいとされている病気が、漢方で完治したり大幅に改善されたりする場合などは、漢方の存在意義の大きなものでしょう。

一方、短所には次のようなものが挙げられるでしょう。

@漢方薬の使い方は複雑なのでマニュアル化ができません。

現在では、漢方本来の使い方と効果を知る専門家は極めて少数で、漢方を深く学ぶ機会も非常に限られてしまっています。

A漢方薬は西洋薬ほど症状を一時的に抑える力が強くない場合が少なくありません。

また、効果を実感できるまでの期間や、効果の出方には個人によって大きな幅があります。

寿元堂薬局でも、長年悩んでいた症状に対して1服で大きな効果を実感できた例もありますが、効果が出るまでに2カ月以上要した例もありさまざまです。

B漢方によって手術を免れた人も少なくなく、打撲や頸椎(けいつい)捻挫などの漢方が得意な外傷もあります。

しかし、一般的には西洋医学のような優れた外科の手段がありません。

このように漢方にも長所と短所があります。

これらを理解し、自分に適した長所を持つものを、状況に応じて上手に利用しましょう。

(北山 恵理)