2018年12月08日

複数の漢方薬を服用する場合とは

西洋医学の薬と異なり、漢方薬を服用するほとんどの場合は1種類の漢方薬で対応します。

複数の漢方薬で対応するには、きちんとした理由があるのです。

今週のリビング新聞(岡山)「ここが知りたい漢方」の更新です(30/12/8号)

漢方薬の剤型(煎薬、顆粒剤、錠剤)A.jpg

漢方の世界では、その人の症状や体質など全身の状態を考慮して漢方薬を選びます。

寿元堂薬局でも、ほとんどの場合は1種類の漢方薬で対応します。

しかし、1種類の薬では対応が難しい時に、2種類の薬を飲んでいただくことがあります。

複数の病気や症状があり、複数の漢方薬で対応せざるを得ない場合や、1種類の漢方薬で対応が難しい症状に、2種類の漢方薬を使って効果を高める場合です。

複数の生薬で構成される漢方薬は複雑で、2種類の薬を同時に服用した場合に全く別の薬になってしまう可能性があります。

そのため、通常は2種類の漢方薬を服用する際には、1種類は食前、もう1種類は食後と、別々のタイミングで服用した方がよいでしょう。

ただし、意図的に2種類の漢方薬を同時に服用することもあります。

錠剤や顆粒(かりゅう)剤などのエキス製剤は、漢方薬本来のかたちである煎じ薬と比較して、薬の種類が限られます。

体質や症状などに適した漢方薬が製剤にない場合、2種類の漢方薬を組み合わせて別の内容の漢方薬として使用することがあるのです。

皮膚が乾燥して痒(かゆ)みがひどく、患部に熱感があったり、のぼせ傾向にある人に適することの多い「温清飲(うんせいいん)」という漢方薬があります。
 
温清飲は、血行を良くし、貧血を補い婦人病でもよく用いられる「四物湯( しもつとう)」と、顔が赤く、胸や胃に熱を持ち不安の強い人に用いられることの多い「黄連解毒湯(おうれんげどくとう)」という2種類の漢方薬を組み合わせた処方です。

例えば、温清飲の製剤の手持ちがない場合に、四物湯と黄連解毒湯という全く異なる人に適する薬の製剤があれば、それらを同時に服用することで温清飲を試すことができるのです。

このような場合には、2種類の漢方薬を同時に服用しなくては意味がありません。

複数の漢方薬を服用する時は、漢方薬の専門家に相談しながら目的に合うように、正しく服用しましょう。

(北山 恵理)