漢方薬を剤型の種類でざっと分けると
@煎剤(せんざい)…煎じ薬(せんじぐすり)のことです
A顆粒剤(かりゅうざい)…粉の薬のことです
B錠剤(じょうざい)
の3つです。(丸剤などの剤型もありますが、今回は触れません)

この中で皆さんにとって1番馴染みのない剤型は煎じ薬ではないでしょうか(。・ω・)ノ゙
「『煎じ薬』ってどんなものか想像つかないです。どんなものなのですか?」と皆さんよく聞かれます。
そもそも漢方薬とは?
漢方薬は何種類かの生薬(しょうやく)を組み合わせたものです。
生薬とは、薬として効能がある植物やら動物やら鉱物のことで、漢方薬の原料です。
有名な葛根湯という漢方薬は、葛根(かっこん)・桂枝(けいし)・麻黄(まおう)・芍薬(しゃくやく)・甘草(かんぞう)・大棗(たいそう)・生姜(しょうきょう)という7種類の生薬を組み合わせたものです。
生薬というと聞き慣れないかもしてませんが、葛根はお菓子や料理に使われるくず粉の原料ですし、桂枝はシナモンとして知られています。芍薬の根は生薬として使われますが、芍薬のお花は見たことのある方も多いでしょう。大棗はナツメのこと。言わずもがな、生姜とはショウガのことです。
このように、生薬として使われるものの中には私たちの身近なものもあります。
身近でない生薬をあげれば、竜骨(りゅうこつ)という大型の哺乳類の骨の化石やら、鹿茸(ろくじょう)という鹿の角があったりします(゚д゚;)
そして、煎じ薬とは何種類かの生薬を組み合わせた漢方薬をコトコト煮つめてできる薬液のことです。
カレーが煎じ薬だとすれば、人参やジャガイモ、タマネギやお肉などの材料が生薬です。
そして、顆粒剤や錠剤の多くは、煎じ薬のエキス成分を抽出して作ったエキス製剤です。
イメージしやすいように例えるなら、焙煎豆をひいて入れたコーヒーが煎じ薬、顆粒剤や錠剤がインスタントコーヒーといったところでしょうか。
最近、寿元堂薬局に来られる方でエキス製剤を漢方薬本来のかたちだと思っている方が少なくありません。
病院などで処方される医療保険の漢方薬だと顆粒剤か錠剤がほとんどですから、そんな風に思ってしまうのも仕方がないのかもしれませんが、昭和の中頃までは皆コトコト煎じていたのですよ(。・ω・)ノ゙
では、それぞれの剤型のメリット・デメリットを簡単に挙げていきますね。
まず、エキス製剤のメリットとしては
・煎じる手間がかからない
・味も香りも煎じ薬ほど強くないので、苦手な方には飲みやすい
・保存や携帯に便利
・病院で処方してもらえば健康保険が適応できる
デメリットとしては
・煎じ薬と比較すると効果が弱い
・製薬会社が決められた処方(漢方薬の名前:葛根湯など)を作っているため、種類が限られる
次に、煎じ薬のメリットとしては
・漢方薬本来の効果をひきだせる
・エキス製剤と比較して処方の種類が多い
デメリットとしては
・煎じる手間がかかる
・味や匂いが独特
・持ち運びや保存がしにくい
※ただし、現在では寿元堂薬局で煎じた煎じ薬をアルミパックに詰めてお渡しできるため、これらの問題は解決できます。アルミパック関してはまた別の記事で紹介します。
こうして箇条書きにすると手軽なエキス製剤に心が動いてしまいそうになりますが、やはり1番大きな差は効果の違いでしょう。
最近、煎じ薬でもエキス製剤でも処方(漢方薬の名前:葛根湯や抑肝散など)が同じであれば効果が同じと思っている方が本当に多いのですが、
エキス製剤と煎じ薬の効果は同じではありません!!
問屋さんの中には、エキス製剤を2倍、3倍飲んでも煎じ薬の効果には及ばないだろう、と言っている方もいらっしゃいます。
師匠が漢方を勉強していた頃は、「葛根湯は原則として妊婦に飲ませてはいけない、飲ませたとしても非常に慎重に経過を観察しながら飲ませなければいけない」という風潮だったようです。
それがいつの間にやら、「葛根湯は妊婦の風邪薬」として、妊婦さんに葛根湯のエキス製剤が処方されることも多くあり師匠も大変驚いたそうです。
それでも妊婦さんに不都合なことが起こるなどの問題になったことはありません。
このようなことからも、煎じ薬とエキス製剤の効果の違いがわかりますね。
ネット上でエキス製剤と煎じ薬の効果は同じと書かれている情報を見かけたことがありますが、寿元堂薬局での経験ではエキス製剤と煎薬の効果には差があります。
病院で処方されたエキス製剤では効果のなかった方に、そのエキス製剤と同じ種類の煎じ薬を飲んでいただいて効果があったというお客様も少なくありません。
もちろんエキス製剤で驚くような効果が見える敏感な方もいらっしゃいますので、そういう方には煎じ薬は必要ありませんね。
しかし、寿元堂薬局には色々な病院を回ってどうにもならない方、西洋薬で症状が改善しているけど西洋薬を長く続けたくない方、純粋に漢方薬に興味のある方など様々な方々がいらっしゃいます。
やはり、西洋医学で対応が難しいお悩みをお持ちの方はエキス製剤の効果では症状に効果が届かない場合も多く、煎じ薬を飲んでいる方が大半です。
漢方薬の効果の決め手は、主に剤型と生薬の品質の良し悪しの2つによって大きく左右されます。
剤型が煎じ薬だからと言って、一概に良いわけではありません。
今日お伝えしたのは、あくまで品質の良い生薬を使ってつくられた煎じ薬とエキス製剤での比較です。
あまり良くない品質の生薬でつくられた煎じ薬と、品質の良いエキス製剤で比較した場合は、もしかしたらエキス製剤の方が効果があるかもしれません。