横文字でお洒落な名前だと漢方とは無縁のように思えますが、漢方では昔から「枸杞子(くこし)」という生薬として用いられてきました。
そんな枸杞の実をテーマに、今週もリビング新聞の漢方よもやま話の更新です(30/1/27号)

近年スーパーフードとして注目される食品が幾つかありますが、その一つ「ゴジベリー」は、枸杞(くこ)の実のことです。
杏仁豆腐にトッピングされている赤い実≠ニ言った方が分かりやすいかもしれません。
枸杞の実は、生薬(しょうやく)の名を「枸杞子(くこし)」といい、主に強壮作用を目的として利用されます。
中国最古の薬物書「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」では、「命を養う」薬とされる上品(じょうほん)に分類され、「久しく服用すると、筋骨をしっかりさせ、身を軽くし老いない」とあり、古くからその効果が認識されていたことが伺えます。
さらに枸杞は、葉を枸杞葉、根の皮を地骨皮という生薬として利用されます。
「楊貴妃(719〜756年)は美容のために枸杞を食べていた」「文徳天皇(827〜858年)は枸杞を栽培する庭園を所有しており、この庭園の管理人が枸杞をいつも食べていたため120歳まで生きた」などの逸話が残っています。
また、夏目漱石が正岡子規へ送った句「枸杞の垣田楽焼くは此奥か」、与謝蕪村が詠んだ句「枸杞垣の似たるに迷う都人」にも登場しています。
現在でも眼精疲労などに良いとされる杞菊地黄丸(こぎくじおうがん)に配合されたり、料理での利用や枸杞酒として親しまれています。
約2000年以上前から重宝されている生薬が改めて注目されることは面白いものです。
(北山 良和)
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