食べ物だと有名な産地だとか、コシヒカリなどのブランドなどで一般の人にも品質の優劣の評価がわかりやすい場合が多いけれど(あえてそういった評価基準にのせない土俵の上で一級品を作っておられる場合もあるでしょうが、一般的な場合の話です)、生薬となると一般の人にわかりやすい基準がないため、品質の良し悪しがイメージしにくいですよね、というお話。
まぁ、生薬というもの自体があまり目に触れる機会がないので仕方がないのかもしれません。
しかし、漢方薬の効果は、生薬の品質と漢方薬の剤型に大きく左右されます。
漢方家の腕も漢方薬の効果を左右するものの1つですが、いくら漢方家の腕がよくても効果の薄い漢方薬では限界があります。
あなたが飲んでいる漢方薬の原料の品質はどうですか?
今週のリビング新聞の漢方Q&A(2018/10/20号)の更新です。

Q.顆粒剤、錠剤、丸剤どれがよく効くの?
子宮筋腫があり、知人に勧められて桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)の顆粒(かりゅう)剤を飲んでいます。桂枝茯苓丸は、顆粒剤や錠剤よりも丸剤がよく効くということを聞きましたが、どうでしょうか。(43歳、女性)
A.品質がよければどちらでもよいです
漢方薬の名前には、葛根湯(かっこんとう)、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、桂枝茯苓丸など、湯・散・丸などが付いています。
湯は煎じて、散は粉末にして、丸は丸薬にして利用するもので、それぞれの剤型、つまり湯剤(煎じ薬)、散剤(粉薬)、丸剤をそのまま飲めば最も効果があるという俗説があります。
湯剤は、配合する生薬(しょうやく)の品質がよければよいのですが、散剤と丸剤では少し事情が異なります。
実は、ほとんどの散剤や丸剤は湯剤として飲めば効果が高まるのです。
例えば桂枝茯苓丸は、210年頃(中国・後漢の時代)に編さんされた書「金匱要略(きんきようりゃく)」に載っている処方で、最初は丸薬をそのまま飲みました。
桂枝、茯苓、牡丹皮(ぼたんぴ)、桃仁(とうにん)、芍薬の5種の生薬を等量ずつ粉末にして、蜂蜜で練ってウサギのふんの大きさの丸薬にして食前に飲んだのです。
その後の歴史の中では刻んだ生薬を煎じて飲むことが多くなり、丸剤と湯剤の両方が利用されました。ちなみに、中国の明代の書「万病回春(まんびょうかいしゅん)」では湯剤として使われています。
江戸時代の書「方輿輗(ほうよげい)」には、「元は丸剤にしてあるが、湯剤にすれば効果が速く出るものだ。湯剤を飲むことができない場合は蜜で練って用いなさい」と書かれており、このことは、現在でも通用します。
現在使われている桂枝茯苓丸の顆粒剤や錠剤の多くは、湯剤のエキスから作られていますが、湯剤に比べると効果はかなり弱くなっています。ですから、顆粒剤、錠剤、丸剤という剤型の違いでは、大きな効果の差はないのが現実です。
むしろ、メーカーによる製剤の特徴の違いを意識してもよいかもしれません。
そして、顆粒剤、錠剤、丸剤で満足する効果がなければ、湯剤を試すとよいでしょう。
有名な当帰芍薬散も、「金匱要略」では、散剤を酒に混ぜて飲みましたが、やはり歴史の中で湯剤として使われていることが多く、「方輿輗」には「当帰芍薬散は散剤になっているが、湯剤にすればよく効果がある処方だ」と書かれています。
その他、五苓散(ごれいさん)、八味丸(はちみがん)など、名前に散・丸がついている漢方薬の剤型は、湯剤を除いてあまりこだわる必要はないでしょう。
いずれにしても実際に効果が表れているかどうか≠何よりも大切な目安にして、剤型を選んでください。
(北山進三)
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