2017年08月31日

漢方薬って即効性がないの?

「漢方薬に興味があって・・・」「前から気になっていたのだけど入る勇気がなくて・・・」「ネットを見て・・・」

お客様が寿元堂薬局に来られるきっかけは本当に様々です。

ただ、寿元堂薬局に来られる方のほとんどが口にする言葉があります。

「漢方薬って即効性がないんでしょう?」

・・・っっ( ̄□ ̄;)!!

実は即効性がないわけじゃないですよ!

確かに、漢方薬の即効性を感じない方もいます。

しかし、漢方薬の即効性を感じる方もいます。

現に私自身、今年の4月に花粉症で滝のように流れていた鼻水が煎じ薬を飲んだ10分後には症状がピタっととまる漢方薬の即効性に改めて驚いた経験をしたばかり。

理屈じゃない漢方の世界で自分自身で漢方薬の効果を経験すると、何年経ってもなんとも言えない感動があります。

話が脱線しましたが、薬の即効性に関しては、効果をどのように定義するかによって話が大きく変わってきますので、お客様とお話していてズレを感じることが多いものの1つです。

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薬の効果には一時的に症状を治める効果と、症状が表面化しないよう体を整える効果の2種類があると思ってください。

まず、一時的に症状を治める効果というのは西洋医学の薬の得意とするところですね!

高血圧で降圧剤を飲んだ時、一時的に血圧が下がります。

多くの方が「薬が効いた」と言えば、このような西洋薬の効き方を想像するでしょう。

ですが、この一時的に症状を抑える効果は、漢方薬も意外にあるものなんですよ。

西洋薬と比較すると、個人差もありますし、1服で変わる人の確率は低いと思いますが、1週間程度で何らかの変化がある方は少なくありません。

1週間程度の期間では即効性があるとは言えないと言われればぐぅの音も出ませんが、色々試してダメだった人が1週間程度で何らかの変化があることは結構早いのではないでしょうか。

それこそ、5年10年色んな病院で手を尽くして何ともならない方が、2〜3ヶ月で何らかの良い変化があるのは大変な即効性だと個人的には思っています。

ただ、薬を飲んで一時的に症状を抑えている間に不都合な症状が出なくなってしまえばよいのですが、そうでない時も多いでしょう。

そんな時に必要なのは、漢方薬のもつ「症状が表面化しないよう体を整える効果」なのです。

ですが、今は西洋医学の治療でも治りにくい状態の人が漢方薬を利用することが多いので、この効果が安定して得られるようになるまでの時間を要する方がほとんどです。

漢方薬の服用が良いきっかけになって短期間の服用後に全く症状が出なくなったという方もいますが、割合としては少ないです。

2割もいないんじゃないでしょうか。

漢方薬を3年飲み続けてすっかり薬が必要のない体になった時、この「3年」を長く感じるのかどうか。

「漢方薬を3年飲んだ」というだけで「漢方薬はすぐに効かない」というイメージが強すぎて、「漢方薬だから即効性がない」「漢方薬だから長く飲まないと効かない」となってしまう。

でも、西洋医学に置き換えてみると・・・.

西洋薬を3年飲み続けて症状が現状維持。西洋薬をやめると不調が出てくる。

このような場合、「西洋医学でも長くかかる病気なんだな」と思う方はいても、おそらく「西洋薬は即効性がない」という結論に至る方は限りなくゼロに近いのではないでしょうか?

何年も慢性的な症状で悩んでいる状態を、数日〜数週間で改善する傾向を探るということはかなり大変なことなのです。

「すぐに良くなりたい」という気持ちは十分にわかりますし、前向きな気持ちも大切です。

しかし、その気持ちが強過ぎても焦りを生んで悪循環に陥ってしまいます。

西洋薬でも漢方薬でも、効果の表れ方や、効果が表れるまでの期間を決めつけず、焦らず上手く利用しましょう。
posted by なつめ at 18:00| 漢方

2017年07月27日

漢方薬と、漢方薬と誤解されやすいもの

今も昔も薬局に来られる方で、漢方薬でないものを漢方薬と誤解している人は多いものです。

今日は漢方薬だと誤解されやすいものについて簡単に紹介していきます!

まず、おさらいから。

漢方薬の剤型でお伝えしたように、漢方薬とは何種類かの生薬を組み合わせたものでした。

「生薬=薬草=漢方」のような連想によって様々な誤解が生まれるのは避けられないことかもしれません。

また、それぞれどこでボーダーをひくかが難しいという問題点もあります。

ですが、めげずに簡単にまとめてみたので皆さん頑張ってついてきてください(笑)

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【日本の民間薬】

これが1番漢方薬と誤解されやすいものですね。

今は皆、当たり前のように不調があれば病院にかかっていますが、昔は「医者にかかる」ということ自体が一般的でない時代が長く続きました。

では、医者にかかれない人たちはどうしていたのか?

民間で経験され、伝承によって行われてきた治療法で対処していました。

1種類から数種類の薬草を症状に合わせて用いますが、漢方薬のようにそれぞれの体質を考慮するということはありません。

風邪を例に出すと、漢方薬では比較的体力があり、風邪のひき始めに悪寒、頭痛、首筋や肩のこわばりなどがあれば葛根湯(かっこんとう)。比較的体力が弱く、胸がつかえるような感じがして微熱が続くような場合は小柴胡湯(しょうさいことう)。体力の衰えている人で冷えを強く感じる時には麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)。

などといったように漢方薬はその人の状態や症状に合わせて選ぶ薬が変わってきます。

一方で、民間薬では体質は考えずに病名や症状をもとに薬草を選びます。

「いぼとりにヨクイニン」「風邪といったら卵酒」という感じです。

「漢方薬飲んでた」と言う方に何を飲んでいたのかお伺いすると、「どくだみ」「ヨクイニン」「杜仲(とちゅう)の葉」などといった答えがよくかえってきますが、それらは民間薬草や生薬の1つであって単体では漢方薬とは言いません。

薬草を飲んだからと言って、漢方薬を飲んだような効果を期待してはいけませんし、漢方薬は効かないと思わないようにしてください。

とは言え、民間薬草の中でも割と効果を実感できるものもあります。

難しいですよね〜(^_^;)

【外国の薬草】

日本の民間薬と同じように、病名や症状に合わせて用います。

ハーブなどは私たちの身近なものですよね。

少し話が脱線しますが、漢方の原料である生薬とハーブでは同じ物が使われていることもあるんです(*^_^*)

甘草(かんぞう)はではリコリス、丁字(ちょうじ)はクローブといった具合に、同じものでも呼び名が異なりハーブの呼び名だと途端にオシャレなイメージになるのが悔しいですが・・・(笑)

ハーブティーでお馴染みのカモミールなんかは日本でも「かみつれ」といって民間療法で使われていたんですよ〜。

【中国の製品】

漢字で名前が書いてある時点で漢方薬だと思われることもしばしば・・・。

漢方にも流派があるのをご存知ですか?でお伝えしたように、中国医学の薬のことは中薬(ちゅうやく)と言って基本的には漢方薬とは異なるものです。

健康食品やお茶も中国のものというだけで漢方薬だと思っている人がとても多いです。

【健康食品やサプリメント】

健康食品やサプリメントに生薬のエキスが含まれていると漢方薬と思う方も非常に多いです。

最近あった例として、漢方を扱っている薬局で購入した生薬のエキスも何も入っていないただの栄養補助食品のことを「漢方薬」だと思い込んでいる方もいらっしゃいました。

お客様が漢方薬を今まで試したことがある場合、参考までにどのようなものを飲んでいたのか、不都合なことはなかったかお伺いすることがあります。

そのお客様も「漢方を飲んでいる」と言われたので、商品を拝見すると漢方薬ではなかったのですね。

「漢方」の看板を掲げているからと言って、扱っている商品が全て漢方薬だとは限りません。

これに関しては、一般の方にとって漢方は馴染みのないものということをふまえてお客様に商品の説明をしていれば防げたのではないかと個人的には感じています。

しかし、購入するお客様がその薬局を選ばれたのも事実。

相性もあることですし、漢方薬局を選ぶ際には色々なところに足を運んで“漢方薬局のはしご”をしてみてもいいのではないでしょうか?


posted by なつめ at 11:24| 漢方

2017年06月26日

漢方にも流派があるのをご存じですか?

華道や茶道など、日本古来の伝統的なものの多くには流派があります。

それぞれの特徴や考え方が異なります。

あまり知られていないことですが、実は「漢方」にも流派があります。

3つの流派があり、それぞれ

@後世方(ごせほう)派
明の時代の中国医学が日本に伝わり、日本独自の発展をとげたもの。陰陽五行説を重んじる理論的な流派です。

A古方(こほう)派
後世方が理論にとらわれすぎて効果が十分に発揮されなくなった時代に、後漢時代の古い医学書である傷寒論(しょうかんろん)・金匱要略(きんきようりゃく)を重視し実務を重んじた流派。

B折衷(せっちゅう)派
後世方と古方の良いとこどりしたらいいじゃん、という流派

と呼ばれています。

ちなみに寿元堂は折衷派。

師匠の師匠である柴田良治先生は、幕末から明治にかけての最高の漢方医と言われている浅田宗伯先生(折衷派)の流れをくんでおられた方で、正統な漢方を受け継ぐ数少ない医師の1人でした。

最近、寿元堂薬局内がざわざわしたことがあるんです。

どうやら今は上記の3つの流派に加えて「中医学派」というものが存在するそうで・・・漢方の流派が4つあるとされているようです。

中医学派というのは、現代の中医学の考え方で漢方薬を使用するそう。

中華民国時代に中国でも近代化を図ろうとする流れがあり、それまでの中国の伝統医学を廃止する方針がうちたてられたそうです。

その後1950年代に毛沢東による文化大革命によって、中国のそれまでの伝統医学と西洋医学を融合させようと整理したものが現代の中医学です。
(※漢方の起源である古代の中国医学と、現代の中医学は異なります)

現代の中医学は1度整理されたが故に、理論はとてもわかりやすく面白い。

ですが、現代の中医学は成立する際に急遽体系づけられたものであり、国際中医師などの資格のとれる中医学院の教材をつくる際に多数決的に理論がまとめられたそうで、今でも多くの矛盾を含んでいるという問題点もあるようです。

※漢方も科学的に証明することが難しいことが多く、問題点は多々あるようですが・・・

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私は「中医学派」があるって聞いた時に「それって漢方じゃなくて中医学なんじゃないの?」って思ってしまいました。

中医学の考え方で中薬(ちゅうやく・中医学で用いられる薬のこと)や漢方薬を選ぶなら「中医学」って言えばいいと思うんです。

というのも、そもそも漢方は日本人の体質に合わせて発展した日本の伝統医学です。

漢方薬本来の効果を発揮するためには、昔から日本でよく用いられてきた漢方の方法論で漢方薬を選ぶことが大切だと私は思います。

ただでさえ教科書通りにいかない漢方の世界ですから、現代の中医学のように理論的に綺麗に整理されたものでは実際の現場で成立しないことも多い。

「漢方は理屈ではない」というのが、師匠の口癖です。

私が師匠のもとで漢方を勉強し始めた頃は、「なんてわけのわからない医学だ」とよく思ったものです。

薬を選ぶ者の経験や考え方、知識によって個人差が大きく、「西洋医学に比べて、なんていい加減な医学なんだ」と思ったこともあります。

師匠は薬を選ぶ時、よく「ぽっと薬がおりてくる」とのたもうております。

このように第六感で薬を選ぶタイプの師匠なので、私が余計に「わからん・・・」と感じたのかもしれませんが・・・。

これ読んだら怒られるかな?(笑)

このような迷える子羊ちゃん状態の時に、周りに師匠がおらず漢方に詳しい方とも巡り会えなければ、私も理論的でわかりやすい中医学を伝統的な漢方だと思い込み中医学派になっていたかもしれません。

実際に自分が漢方薬を選ぶ立場になって、漢方の方法論で薬を選んでも教科書通りにいかないことも多いと本当に身にしみて感じています。

理論的でわかりやすい現代の中医学は面白いですが、早々に限界を感じていたのではないかなぁと思います。

しかし、中医学も経験を積んで学べば学ぶほど、理論よりも直感や経験を重んじる機会が増えていくのではないでしょうか?

「教科書から外れることがある」「自分の感覚で教科書から外れたことをした結果良い方向にいった」ということはきっと漢方の世界だけではなく、どんな世界でも共通することじゃないのかなと個人的に思っています。

それぞれの世界のプロフェッショナルの方々、いかがでしょうか?

長文でつらつら書いてしまいましたが、今日の記事で誤解をしていただきたくないのが中医学派の漢方を否定しているわけではありません。

先にある3つの流派でも、考え方や見立てによって選ぶ薬が異なることもあります。

また、漢方と西洋医学、中医学の優劣を問いたいわけでもありませんし、対立するものではないと思っています。

漢方薬、西洋薬、中薬などの薬にはそれぞれ得意分野、不得意分野があるので、それぞれの長所をうまく利用して悩んでいる方が良い方向に向かうのが、どの立場であれ1番なんです。

ただ、色んなことを知った上で納得してお薬を試していただきたい。

それだけです。

ですが、何が正しい情報なのかわかりにくい時代です。

漢方の看板をかかげている病院や薬局を選ぶ際に「どこの流派ですか?」と尋ねてみるのも、漢方を試す場所を探す1つの手がかりになるかもしれません。

posted by なつめ at 15:29| 漢方