2019年02月18日

自律神経失調症と肝臓は関係しますか

古代の中国の思想に五行説というものがあります。

五行説はいろいろなものと関連しており、人の体も例外ではありません。

が、五行説に出てくる五臓と、私たちの体内の臓器は全く別物です。

詳しくは、今週のリビング新聞をどうぞ。

漢方Q&A(2019/2/16号)の更新です。

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Q.自律神経失調症と肝臓は関係しますか?

 イライラして動悸(どうき)や不眠があり、自律神経失調症といわれました。ある人に肝臓が悪いからだといわれましたが、どうでしょうか。(54歳、女性)

A.五行説の肝は肝臓のことではありません

 治したい症状を相談すると、西洋医学の検査では異常がないのに、肝臓や腎臓が悪いといわれたという人がいます。あなたもその一人ですね。

 さて、古代の中国の思想に五行説というものがあります。万物を木、火、土、金、水の5つの要素に分けて、お互いに影響し合うという考え方で、政治や宗教を含めて、すべての分野に取り入れられた時代があります。

 五行説は医学にも影響を及ぼし、内臓全体のことを五臓六腑といい、五臓は肝、心、脾、肺、腎に分けられました。

 これらは、肝臓、心臓などと西洋医学で内臓の名前に使われているため誤解されやすいのですが、漢方では、体のさまざまな働きを振り分けて名前を付けたもので解剖学的な臓器のことではありません。「肝、心、脾、肺、腎」と「肝臓、心臓、脾臓、肺臓、腎臓」は同じものではないのです。

 五臓の肝は、ほぼ西洋医学の肝臓の働きに加えて精神の活動に大きく影響し、感情や自律神経の働きと関係しています。 また、人の感情は、五行では、肝、心、脾、肺、腎を、それぞれ怒、喜、思、憂、恐と関連づけて五情といいます。

 ですから、イライラして怒りっぽくなることを漢方では肝の病ということがあります。

 ちなみに、肝は疳(かん)や癇(かん)につながり、疳が強いとか、癇に障るなどといい、共に怒りやすいことですね。

 漢方には癇症という病名もあります。古くは癲癇(てんかん)のことでしたが、後に怒りっぽいことやいら立ちやすいことをはじめとして、物事が気になったり、ささいなことで悩んだりなど、感情の偏りを広く意味するようになりました。これらは解剖学の肝臓の機能とは直接関係はありませんので、検査もしないで肝臓が悪いといわれたことは気にしないでよいでしょう。

 肝と肝臓に限らず、五臓と西洋医学の臓器を混同することは避けたいものです。

 五行説と漢方の関わりですが、漢方の基になった明の時代(1368〜1662)の中国医学には五行説が取り入れられていました。

 江戸時代に中国医学が変革して日本独自の医学である漢方になっていく過程で、五行説を重視した後世派(ごせいは)よりも経験を重んじた古方派という流派が効果を上げる時代がありました。後に、両派の長所を取り入れた折衷派が漢方の主流になりましたが、五行説は以前ほど重んじられなくなりました。

 現在の漢方でも、やはり折衷派が主流ですが、経験を重んじた効果的な漢方薬の使い方に加えて、五行説の一部が活用されています。

(北山進三)

posted by なつめ at 12:02| リビング新聞−漢方Q&A−

2019年01月19日

漢方薬で月経不順になることがある?

こういう仕事をしていると自分自身が実験台ということもあり、不調があると漢方薬で対処する場合がほとんどです。

その中で、漢方薬を服用し始めて瞑眩(めんげん)と考えられる症状に驚いたことがあります。

瞑眩は副作用とよく間違われます。

両者の違いは、不都合な症状が出る期間でしょう。

不都合な症状が長引くようなら、それは瞑眩でも好転反応でもありませんのでご注意ください。

さて、今週のリビング新聞の漢方Q&A(2019/1/19号)の更新です。

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Q.漢方薬で月経不順になることがある?

慢性の頭痛、肩凝り、冷え症などの改善に漢方薬を飲んでいます。症状は良くなってきましたが、月経が乱れてきました。漢方薬の副作用なのでしょうか。
(38歳、女性)

A.よい副作用と瞑眩(めんげん)

 漢方薬を飲んで効果の出る人の多くは、不都合なことなく順調に症状がよくなっていきます。

 しかし、まれに不都合な症状が出ることがあります。副作用と瞑眩(めんげん)です。

 薬の副作用とは、目的とする作用とは別の作用で、一般には悪い作用のことを示します。

 漢方では、風邪には葛根湯などと病名だけで漢方薬を選んだときに、薬が体の状態に合わなくて不都合な副作用が出ることがあるようです。これが世間でいう漢方薬の副作用のほとんどです。

 しかし漢方家は、病名にあまりこだわらず、全身の状態に適した漢方薬を選ぶ努力をしますので、悪い副作用が出ることはまれで、むしろ目的とする症状以外の症状まで改善するよい副作用が出ることも多いのです。

 よい副作用の例には、不定愁訴の改善を求めた女性が、順調に改善したが、過去にはなかった月経不順が数カ月間続いた後、30日周期が28日周期に変わって全身の体調がよりよく整ったというものがあります。

 薬が合っているにもかかわらず、一時的に症状が悪化したり、予期しない症状が出たりすることを瞑眩といいます。

 瞑眩は副作用とは異なり、症状の改善が早まるために起こる作用です。一時的に症状が悪化したり、不都合な症状が出たりしますが長くは続かず、その後は症状の改善が早くなります。

 古くから「薬に瞑眩の症状が出なければ、その病は癒えない」という言葉もあるくらい瞑眩が望ましいものともされていますが、瞑眩が理解されにくい現代の漢方家はできるだけ瞑眩が出ないように努めていることが多いです。

 しかし、漢方薬に対する感受性の違いにより、やむを得ず瞑眩が出てしまうことがあるのです。

 瞑眩の例には次のようなものがあります。

 痒(かゆ)みの強い慢性の皮膚病が漢方薬を飲み始めて数日だけ湿疹が増悪して痒みが強くなった後で症状全体がよくなった。

 慢性の頭痛症の人が漢方薬を飲んで、かえって頭痛が強くなった後で、頭痛症が治った。

 月経困難症の改善のために漢方薬を飲んだ女性に、極めて強い月経痛が起こり、その後、月経痛を忘れてしまった。

 瞑眩は、一時的に症状が悪化しますが、通常は2〜3日以内、長くとも1週間以内に症状全体の速やかな改善がみられることが多いものです。

 副作用も瞑眩も多彩です。あなたの場合は、症状が改善されていることから、全身の状態がよいのでしたら、よい副作用の可能性が高く、月経の状態がよりよく整っていくことでしょう。

(北山進三)
posted by なつめ at 00:00| リビング新聞−漢方Q&A−

2018年12月15日

風邪の初期、葛根湯では治らない?

先日、某朝の情報番組で「風邪をひいた時の1番の薬は寝ること」だと言っていました。

当たり前のことなのですが、ついつい理屈に振り回されてしまって、その当たり前のことを見失っていることが多くなってしまっているような気がします。

最近、知らない人はほとんどいないほど有名になった葛根湯。

なんでも万人に合うというものはありません。

特に漢方薬は飲む人の体質や飲み時が効果を左右します。

葛根湯も飲む人を選ぶことを是非知っておいてくださいね。

さて、今週のリビング新聞の漢方Q&A(2018/12/15号)の更新です。

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Q.風邪の初期、葛根湯では治らない?

 風邪を引いた時は葛根湯(かっこんとう)を飲んでいます。しかし、風邪の引き初めに葛根湯を飲んでも治らない、とテレビで放送されていましたが本当でしょうか。私の友人も「気になる」と関心を寄せています。(34歳、女性)

A.葛根湯は効きますが、使い方が大切です

 また、漢方薬についてテレビでいいかげんなことを放送したようです。

 いかにも物知りの人が質問に答える番組で、「風邪の引き初めの効果は葛根湯も総合感冒薬も変わらない」と某大学の研究結果を引用しました。

 この大学の研究は、風邪の初期に、それぞれ168人と172人に葛根湯と総合感冒薬を飲ませて比較した結果、効果に違いがみられなかったということです。

 またある医師が「葛根湯も総合感冒薬も風邪の症状を和らげるだけで、風邪を治す効果はない」と断言しました。西洋医学の感覚ではそうかもしれませんが、漢方の世界では大きな間違いです。

 実は「風邪の初期」というだけで葛根湯を飲んで効かないケースが多いことは、心ある漢方家の常識です。そればかりか、使い方が悪ければ副作用と間違えられるような不都合な作用が出ることもあるのです。

 ところが、風邪には葛根湯≠ニいうように、医療関係者を含めて多くの人が葛根湯を風邪薬と思っている現状では、葛根湯の効果はテレビの放送のような意味合いしか持ち得ないでしょう。

 しかし、漢方薬は飲む人の体質や症状などを含めた全身状態に適した薬を選んで飲むもので、病名で薬を選ぶものではありません。

 風邪の初期に使われる漢方薬も、市販されている薬だけで、葛根湯、麻黄湯(まおうとう)、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)、桂枝湯(けいしとう)、参蘇飲(じんそいん)、香蘇散(こうそさん)、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)などがあります。

 これらをその人の状態に合わせて使い分ければ、漢方本来の効果が引き出しやすいのです。

 寿元堂薬局には、風邪で葛根湯を勧める状態の人が来られることは少なく、せいぜい10人のうち1人か2人。

 私自身は、風邪を引いて葛根湯を飲んだことが2度あり、どちらもよく効きました。特に大みそかの夕方に39℃を超える熱が出て、寝正月になるかと思ったときに葛根湯を煎じて飲んで、1晩できれいに風邪が治って、よいお正月を迎えたことを覚えています。

 テレビで引用された論文にも、葛根湯を漢方という医学の考え方を考慮しないで、風邪の初期という目標だけで使ったことが、結果に影響している原因の一つかも知れない、ということが書かれています。

 西洋医学には風邪を治す薬がないことは医学の常識ですが、漢方薬を上手に使えば風邪が治せるかもしれません。

 漢方薬は使い方で大きく効果が変わるのです。

(北山進三)

posted by なつめ at 00:00| リビング新聞−漢方Q&A−