2018年04月07日

漢方の口訣って何ですか?

皆様、お花見楽しみましたか?

今年の桜はあっという間に散っていきましたね。

そして今日の気温の低いこと!

春はいずこへ…(;ω;)

今週の漢方Q&Aは、師匠が長年培ってきた資料をまとめた「漢方処方・口訣(くけつ)集」についてのお問い合わせがありましたので、「口訣」をテーマにしています。

では、リビング新聞の漢方Q&A(2018/4/7号)の更新です。

はかせA.jpg

Q.漢方の口訣って何ですか
 
 漢方薬を扱っている大阪の知人から、北山先生の「漢方処方・口訣(くけつ)集」が役立つと聞きました。江戸時代の口訣の資料が豊富でよいとのことですが、口訣って何ですか。(43
歳、女性)

A.漢方薬を効果的に運用する秘伝

 口訣は、広辞苑によると「文書に記さず、口で言い伝える秘伝」とあります。料理に例えると、優秀な料理人が見込んだ弟子に教える調理のコツのようなものです。

 経験医学である漢方も、師から弟子に秘伝を伝えることで継承されてきました。経験を基に組み立てられた陰陽説や五行説などの理論だけでは漢方の効果を引き出すのが難しいからです。これは調理の基本を学んだだけではおいしい料理店ができないのと同じです。

 師の口訣を弟子が書き留めたものや古い時代の名医の解説書なども漢方では口訣と呼び、口訣には漢方薬を効果的に運用するコツが多く含まれています。

 「漢方処方・口訣集」は漢方薬の出典と口訣を多数収載していますが、出典と口訣を参考にすることは、料理の基本の知識を深めながら、優秀な先輩たちのアドバイスを聞くことに似ています。

 現在は漢方薬が氾濫していますが、風邪には葛根湯≠ネどと、病名だけを手掛かりに薬を選ぶ簡便な使い方(病名漢方といわれます)と、理屈をてっとり早く学んでよしとする中医学といわれる中国医学が分かりやすいために広まって、どちらも漢方≠ニいうことになっています。

 これは、一つの料理が全ての人の好みに合うとしたり、味は差し置いて講釈を述べたりすることに似ています。

 病名漢方は健康保険が使える漢方薬に多いのですが、これは西洋医学の中の漢方薬≠ニいう区分の薬と考えればよいかもしれません。

 素晴らしい発展を遂げている西洋医学の漢方薬≠フ使い方には将来の可能性が秘められているでしょう。

 一方の中医学は漢方は中国が本場≠ニいう誤った先入観と、どちらも生薬(しょうやく)で作った製剤のためか、漢方と同一視されることが増えました。

 本来の漢方は難しく、今では学べる機会も全国的にまれになりましたが、20年ほど前までは漢方に熟練し、漢方と中医学の比較ができる先生方がまだおられました。

 漢方を深く知らない今の人たちは、漢方と中医学の比較さえできなくなっています。ともあれ、結果がよければ何でも良く、それぞれの立場で研さんに励んでいる人たちはおられるでしょう。

 しかし、漢方の優れた特徴が知られることなく、病名漢方と中医学が漢方≠ニ錯覚されるようでは、真の漢方とその素晴らしい効果が世間から失われかねません。 

 大阪のお知り合いは数少ない漢方の専門家の一人なのではないでしょうか。そのような人によって漢方が継承されていくと思います。

(北山進三)
posted by なつめ at 18:00| リビング新聞−漢方Q&A−

2018年03月07日

牛黄について教えてください

高貴薬の1つである牛黄。

高貴薬であるが故に誤魔化しが多いのも事実です。

1番間違いないのは製品になったものや粉末になったものを手に入れるのでなく、加工されていない品質の良い牛黄を手に入れて砕くこと。

寿元堂薬局でもそうしています。

そんな牛黄について、リビング新聞の漢方Q&A(2018/3/3号)の更新です。

はかせA.jpg

Q.牛黄について教えてください

 いつも牛黄を飲むと調子が良いのですが、先日東京で友人からもらった牛黄を飲むと少し気分が悪くなりました。牛黄が合わないことがあるのでょうか。(67歳、女性)

A.品質の良し悪しが効果に大きく影響

 牛黄は、牛の胆石を乾燥させたもので、昔から使われている動物生薬です。牛1000〜3000頭に1頭にしかできないといわれる希少なもの。1〜4p程度の球や三角錐(すい)、さいころのような形もあり、黄褐色をしています。

 鎮静作用、強心作用、利胆作用、造血作用、滋養強壮作用などがあり、漢方では、心臓病(狭心症、不整脈など)や肝臓病(肝炎、肝硬変など)の改善を目的に使われるほか、体力増強や疲労回復を目的としても重宝されます。

 古典には「久しく服すれば身を軽くし、天年を増し、人をして忘れざらしめる(長く飲めば、寿命をのばし、物忘れをしなくする)」と記されています。効果を知る漢方家が、高齢になると体調を維持するために持薬として飲むことが多いのも牛黄です。

 品質の良い牛黄は粉末にすると黄色みがかったきれいな黄土色をしています。多少品質が落ちても粉末にしてしまえば違いは分かりませんが、さらに品質が悪くなると色が汚くなり、黒みを帯びてきます。このような品質の悪い牛黄を飲んだときに気分が悪くなることがあるようです。

 ですから、ご質問の方は、牛黄が合わなかったのではなく、飲んだ牛黄の品質が良くなかったということでしょう。

 牛黄は一般に高価なため、ウコンやキハダなど黄色い生薬を粉末にして混ぜるなど、昔から混ぜ物で量を増やしたものが横行していたようです。

 最近ではこのようなことは少ないようですが、それでも牛黄の品質を保つのはなかなか難しいのは確か。どんなものでも高品質≠うたうご時世、牛黄に詳しくなければ良品を見分けるのは難しいものです。

 牛黄を含めて、漢方薬の品質は効果に大きく影響することがあります。長い期間飲んで効かなかったという漢方薬を持って来られた人に、同じ内容の薬の品質を良くしただけで効き出したこともあります。
 
 30年ほど前には生薬の品質にこだわる専門家が少なくなかったのですが、最近は日本薬局方という厚生労働省の決めた規格に合格すればよしとする傾向が見られます。国の規格に合えば品質が良いと思う人が多いようですが、品質を重んじれば、日本薬局方の規格は最低限の品質を保証する意味でしかないのです。

 牛黄は市販の医薬品にも使われ、心臟の薬、子どもの薬、栄養ドリンク剤、中国製の薬などにも配合され重宝されています。ただし、牛黄をそのまま粉末にしたものを利用すると、その効果をさらに効率的に引き出すことができると長年の経験から実感しています。

(北山進三)
posted by なつめ at 16:56| リビング新聞−漢方Q&A−

2018年02月03日

冷えを改善する漢方薬は?

今日は節分です。

670977.jpg

いきなりですが、豆まきに使う豆は炒った豆ですよね。

これにはきちんと理由があって、生の豆を使うと拾い忘れた豆から芽が出てしまうと縁起が悪いからだそう。

また、「炒る」は「射る」にも通じ、鬼の目である「魔の目(魔目=まめ)」に豆を投げつけて、「魔を滅する(魔滅=まめ)」と考えられていたそうです。

そして最後は、豆を人間が食べてしまうことで鬼を退治したことになるわけですね。

豆まきをして、ご家族みんなで1年の健康を願いましょう♪

さて、今回は女性の漢方薬によく含まれている当帰(とうき)について、リビング新聞の漢方Q&A(2018/2/3号)の更新です。

はかせA.jpg

Q.冷えを改善する漢方薬は?

 寒さが続き体が冷えます。冷えは万病のもとなどと聞くと気になります。漢方薬を飲むと冷え症がよくなると聞きましたが本当でしょうか。(28歳、女性)

A.体を温める代表的な生薬は“当帰”

 1月の下旬から寒さが一段と厳しくなり、今年はまだ寒い日が続きそう。冷え症の人にはつらい季節です。日本人には冷え症が多く、女性の3分の2、男女合わせて約半数が冷え症といわれることがあります。そして、その多くは体質的なもので、冷え症の改善を求める人の大半は女性です。

 漢方では昔から、冷えが病気に関係していることに気付いており、神経痛、腰痛、関節リウマチ、膀胱(ぼうこう)炎、腹痛、月経不順、不妊症、その他多くの病気に使われる漢方薬の中には冷えを改善する効果があるものがたくさんあります。

 漢方では、一人一人の症状と体質に適する漢方薬を飲むことによって病気を改善しますが、病気の人から細かく症状を伺うと、冷えがあることが少なくないのです。

 そして冷えの症状も、手足が冷える、下腹部が冷える、下半身が冷える、冷えてのぼせる、水中に座っているように冷えるなどさまざまです。

 また、冷え症を気にするあまり、月経不順、月経痛などのありふれた症状を改善することに気付いていない人もあります。そのようなときにも適切な漢方薬を続けて飲むと、冷え症の改善と共に他の症状もよくなっていきます。

 体を温める代表的な生薬(しょうやく)に、セリ科多年草の根を乾燥した当帰(とうき)があります。大和当帰、北海当帰、唐当帰(からとうき)などがあり、味や香りはもちろん、効果も異なります。日本で古くから使われている良質の大和当帰は本当帰(ほんとうき)ともいわれ、現在では奈良の吉野地方でわずかに栽培されるだけになり、中でも大深当帰(おぶかとうき)と呼ばれるものは最上品です。寿元堂薬局は大深当帰を使っていますが、一般には北海当帰が多く使われます。中国産の唐当帰は同じセリ科の別種の植物です。

 当帰が含まれる当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味逍遙散(かみしょうようさん)、温経湯(うんけいとう)などの漢方薬は、冷え症の女性によく使われます。

 キンポウゲ科トリカブト属の塊根も、たいへんよく体を温める生薬です。猛毒があることで知られるトリカブトも使い方次第で隨分役に立つ生薬として利用されます。

 現在は毒性を弱めたものが使われており、真武湯(しんぶとう)、八味地黄丸(はちみじおうがん)、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)などに含まれて冷え症の改善に役立っています。

 最近までは、単に冷える性分として西洋医学で軽んじられてきた冷え症ですが、漢方では真剣に取り組んできた長い歴史があります。漢方薬を上手に利用してください。

(北山進三)
posted by なつめ at 17:30| リビング新聞−漢方Q&A−