2019年08月05日

夏バテを回復する漢方!

皆様、ご無沙汰しておりました・・・。

寿元堂薬局は無事に仮店舗への移転が終わり、まだまだ慣れない環境の中ですがなんとか業務をこなしております。

以前と比べ倉敷駅から離れてしまい、ご不便をおかけしてしまう方も多く大変申し訳ございません。

私事で申し訳ありませんが、店舗と自宅の引越しがかさなりリビング新聞さんの連載も一時お休みさせていただいておりました。

今週から再開致しますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

今年も災害級の暑さが続いております。

私が学生の頃より10℃も気温があがっています・・・恐ろしや。

毎日テレビで熱中症対策が放送されていますが、西洋医学が主流になる前は、漢方薬で様々な症状に対応してきました。

今回ご紹介するのは古典にも載る暑気あたりに対する漢方薬です。

では、久しぶりですが、リビング新聞(岡山)の「ここが知りたい漢方」の更新です(2019/8/2号)

漢方薬の剤型(煎薬、顆粒剤、錠剤)A.jpg

今年は梅雨がなかなか明けずに、湿気の多い重だるい日が続きました。

梅雨が明けると今度は暑い日が続き、食欲が減退して疲れ気味という人が多いようです。

漢方では暑気あたりのことを中暑(ちゅうしょ)と言い、暑さに中( あた)った状態を指します。

今回は、夏バテを回復する漢方薬を紹介しましょう。

清暑益気湯(せいしょえっきとう)という漢方薬は2種類あり、「医学六要」(いがくりくよう)と「内外傷弁惑論」(ないがいしょうべんわくろん)という書物に載っています。

現在よく使われているのは「医学六要」の処方です。

体が熱く手足のだるさを感じ、食欲も元気もなくなり軟便気味で、次第に痩せていくような症状に用いられる薬です。

生脉散(しょうみゃくさん)という漢方薬は、脈が消えそうになった時に、脈を復活させる処方として作られたものです。

脱水症状を主とする夏バテ、体力が低下した時の疲労回復などに効果的です。

そして、夏バテで弱った体力を補う特効薬〞の一つに牛黄(ごおう)があります。

牛黄は牛の胆石。

3000頭に1、2頭からしか取れない希少価値の高い漢方薬です。牛黄は品質が効き目に大きく影響するため、良質のものを選ぶことが非常に大切です。

夏は暑さだけでなく、冷えにも気を付けたいところです。

最近では「夏こそ冷えの季節」ともいわれるほど。

江戸時代の医学書である「方彙口訣」(ほういくけつ)には「夜は寝冷えなどで夜陰の気を受けやすく、また、暑さに苦しんで生ものや冷や水などを飲み食いするゆえに、体の中が冷飲食に傷られる」とあり、冷蔵庫や扇風機のない時代にもかかわらず夏の冷えに注意を呼び掛けています。

冷房などが当たり前の現代では、なおさら注意が必要。冷房を使用する際は温度を下げ過ぎないよう注意しましょう。

また、暑い日には冷えた飲み物やアイスクリームなど体を冷やすものにばかり手が伸びてしまいがちですが、飲み過ぎや食べ過ぎに気をつけたいものです。

(北山 恵理)

2019年05月17日

女性特有の症状と漢方薬!

ぽかぽか陽気ではなく、暑いっっ!(;ω;)

気持ちの良い季節が一瞬で過ぎ去ってしまって、子供の頃と比べると「四季」はどこにいってしまったのだろう?と思ってしまう今日この頃ですが、女性の月経不順や月経痛のご相談が増えています。

女性特有の症状といえば、やはり漢方の得意とするところ。

気になる症状はなんでも早めに手をうっておくにこしたことはないですが、将来的なことを考慮すると月経が関係しているものは特に早めに対応していた方がよいでしょう。

今週は女性特有の症状について、リビング新聞(岡山)の「ここが知りたい漢方」の更新です(2019/5/17号)

漢方薬の剤型(煎薬、顆粒剤、錠剤)A.jpg

月経不順や月経痛で悩んでいる女性は多くいます。

しかし、それらを異常なことと思っていない人が少なくありません。 

重大な病気が隠れていることがあるので、まずは原因を調べてみることも大切ですが、多くの場合、女性特有の症状に漢方薬は高い効果を発揮します。

漢方では昔から「婦人の諸病の起りは月経の不調によるなり」などといわれ、月経の乱れが女性の病気の多くに関係していることが経験により理解されていました。

そして、月経不順や月経痛を改善する漢方薬が工夫されてきたのです。

漢方は経験を重視し、実際の効果を確かめながら発達した医学です。

使い方さえ間違わなければ効果が期待できるのは当然でしょう。

大切なことは、「月経不順には○○、月経痛には△△がよい」などと、病名や症状だけで一定の薬を決めつけないこと。

同じ病名や症状でも、一人一人の細かい状態は異なります。

服用する人の体質や症状に適する漢方薬を選んで試すことが、効果的な漢方薬の使い方につながります。

漢方薬は、西洋薬のホルモン剤や鎮痛剤のように、一時的に月経をコントロールしたり、痛みを抑えたりする効果は強くありません。

しかし、一時しのぎの効果ではなく、体の状態を整えることによって、月経不順や月経痛が起こらないように治してしまうことを目的とします。 

さて、女性のホルモンバランスの乱れを漢方では瘀血(おけつ)といいます。

月経不順や月経痛はもちろん、子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫(のうしゅ)のほか、冷え症、不妊症、更年期障害・血の道症など、女性の不調の多くに瘀血が影響しています。

漢方薬で瘀血の状態を上手に整えることができれば、女性の病気が改善されやすいのです。

多くの場合、3カ月も服用すれば良い結果が得られます。

漢方の専門家によく相談して、上手に試しましょう。

月経困難症で市販の鎮痛剤を服用する人も多いのですが、その場しのぎの薬でなく、漢方薬で根本治療をしてほしいものです。

(北山 恵理)

2019年04月06日

外傷に対応する漢方の効果とは!

羽生選手、怪我がクセになってしまっているよう・・・。

漢方薬を試してみたらいいのになぁと思います。

今週もリビング新聞(岡山)の「ここが知りたい漢方」の更新です(2019/4/6号)

漢方薬の剤型(煎薬、顆粒剤、錠剤)A.jpg

先日行われた世界フィギアスケート選手権で日本の男子選手が見事な演技を披露し、銀メダルに
輝きました。

その選手が望む結果にならなかったことは残念ですが、彼が気にしていたのは右足首の調子です。

捻挫などは繰り返し症状が出ることが多いようです。

さて、明治時代に漢方が衰退した要因の一つに、戦場での外傷に対する応急手当が西洋医学よりも劣っていたことが挙げられます。

その流れは明治時代以降ますます広がり、現代では外傷に対して漢方が思いのほか役立つことがあることは忘れ去られています。

しかし、西洋医学が重視されるようになるまで日本の医療を支えてきた漢方には、多くの外傷にも対応してきた歴史があります。

そうした漢方の効果の中には、西洋医学にはない貴重なものがあるのです。

西洋医学では原因がはっきりせず長く悩まされている頸椎(けいつい)捻挫の痛み、骨折した場所や手術跡のあたりがいつまでたっても痛むなどの症状が、漢方薬の服用で改善していくことは少なくありません。

漢方では、外傷の原因を瘀血(おけつ)と考えます。

血の循環が滞った状態で、内出血を想像すると分かりやすいでしょう。

そのため、駆瘀血剤(くおけつざい)といわれる瘀血をさばく漢方薬が利用されます。

駆瘀血剤というと婦人科の症状に利用するものと思われがちですが、瘀血が原因のさまざまな症状に利用されます。

駆瘀血剤で一般的に外傷に利用されているものが幾つかあるのでご紹介しましょう。

腫れや痛みが激しく、比較的体力があり便秘傾向の人に利用する桃核承気湯(とうかくじょうきとう)、皮下出血が広範囲にあるときや軽度の頸椎捻挫に桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、腫れや痛みのほか、筋骨の疼痛(とうつう)が長引くときには「打撲を治す薬」という意味の名が付けられた治打撲一方(ちだぼくいっぽう)などが利用されています。

西洋医学の治療でなかなか改善せずに悩んでいるときは漢方の専門家に相談してみてはいかがでしょうか。

(北山 恵理)