2018年10月06日

漢方薬本来の効果は、病名漢方≠ナは無理

「漢方薬には副作用はありませんか?」と、よく尋ねられます。

漢方薬を服用する人の体質を考慮して薬を選んでいくため、ほとんどの場合において副作用を恐れる必要はないでしょう。

しかし、副作用と間違えられやすいものには、誤治(ごち)や瞑眩(めんげん)があります。

体質や症状を総合して判断する証は正しいけれど、症状が治癒する前に一時的に悪化する「瞑眩」や、漢方薬が正しく用いられない「誤治」の結果で起こる不都合な症状を副作用と思われるのは非常に残念です。

今週もリビング新聞(岡山)の「ここが知りたい漢方」の更新です(30/10/6号)

漢方薬の剤型(煎薬、顆粒剤、錠剤)A.jpg

最近、漢方薬は随分と普及しています。

ところが、日本の伝統医学である漢方薬本来の使い方をされていることは、残念ながらいまだに少ないものです。

漢方薬は「風邪には葛根湯(かっこんとう)」というように、病名で選ぶものではありません。

「この病気にはこの漢方薬」という単純な決め付けを、私たち漢方家は病名漢方〞と名付けて
います。

本来の漢方薬の使い方であれば、同じ風邪でも発熱しているか、首や肩が凝っているか、寒気がするか、頭痛がするか、鼻水がひどいか、胃腸の調子はどうかなど、症状と体質を考慮して薬を選んでいかなければなりません。
 
昭和61年「小柴胡湯(しょうさいことう)」という漢方薬が慢性肝炎での肝機能障害を改善すると発表されました。

漢方薬は飲む人の「証(しょう)」によって薬を選びます。
 
ですから、小柴胡湯の仲間である体力のある人向けの大柴胡湯(だいさいことう)や、体力がない人向けの柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)などが同じように使用されていなければおかしいのです。

しかし、実際の現場では、飲む人の体質を軽んじた「肝機能障害には小柴胡湯」といった認識で漢方薬が扱われてしまいました。

その結果、前年まで使用量トップだった葛根湯を抑え、小柴胡湯の使用量がトップに躍り出たのです。

このような使い方をしても不都合なことがなければよかったのですが、残念なことに間質性肺炎という副作用が問題となってしまいました。

国も西洋医学とは異なる漢方薬の使い方があるとし、平成9年には薬の説明書である「添付文書」に、「患者の証(体質・症状)を考慮して投与すること」という一文が加えられました。

このように、漢方薬が正しく用いられない結果で起こる不都合な症状を副作用と思われるのは残念です。

漢方薬は病名漢方〞でなく、漢方という医学の考え方で扱ってこそ、本来の効果を実感することができるのです。

(北山 恵理)

2018年09月29日

体質を虚証と実証で分類

体力のある元気はつらつな実証の人。

体力がなく疲れやすい虚証の人。

上記の2つのイメージしやすいですが、お相撲さんのように体力も元気もある人でも弱っているときは虚証の傾向で考えなければいけないこともあり、判断するのはなかなか難しいものです。

さて、今週もリビング新聞の漢方よもやま話の更新です(30/9/29号)

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漢方薬は病名ではなく、体質や症状を目標に薬を選びます。

漢方では、人の体質は虚証と実証に分類され、虚証の人は元気や体力が足りておらず、病気に対する抵抗力が弱く、だらだらと不調が続く場合が多いとされています。

また、実証の人は元気や体力が充実しており、病気に対する抵抗力が強いため、激しい症状が出やすい傾向にあると考えられています。

原則的に、虚証の人には足りないものを補う補剤(ほざい)を、実証の人には余っているものを取り除く瀉剤(しゃざい)を選び、症状を治めていきます。

有名な補中益気湯(ほちゅうえっきとう)という漢方薬は、名前にもあるように中(体の中、主に胃)を補い、気を益する補剤です。

胃腸を整え、元気を付ける補中益気湯は、補剤の王様として医王湯(いおうとう)という別名もあるほど。

胃腸が丈夫でなく、疲れやすい人によく用いられる薬です。

漢方薬は適切に用いれば、特殊なアレルギーなどを除いて悪い副作用の心配はほとんどありません。

本来の目的とは異なる症状が改善するといううれしい副作用も多いものです。

しかし、虚実を見誤る誤治(ごち=誤った漢方薬の使い方)により生じた不都合な症状が、漢方薬の副作用とされることも多く残念なことです。

漢方薬は体質や症状を専門家に相談しながら上手に利用しましょう。

(北山 恵理)

posted by なつめ at 16:00| リビング新聞−よもやま話−

2018年09月22日

自律神経失調症によい漢方薬は?

朝晩少しずつ冷えてきていますが、今日は日差しが暑かったですね。

こういう時は知らないうちに肉体的にも身体的にも負担がかかりやすいです。

イベントの秋、食欲の秋、音楽の秋で楽しいことが目白押しな季節ですが、体の調子と相談しながら無理なく楽しんでくださいね(*^_^*)

では、今週のリビング新聞の漢方Q&A(2018/9/22号)の更新です。

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Q.自律神経失調症によい漢方薬は??

 数年前から、めまいや頭痛があり、肩凝りが強くて、夜よく眠れない日が続いています。自律神経失調症と診断されていますが、なかなかよくなりません。漢方薬を試してみたいと思うのですが…。(46歳、女性)

A.漢方が役立つことが多い病気です

 私たちの体には網の目のように神経が張り巡らされています。

 体の隅々まで行き渡る神経のうち、自分の意思で筋肉を働かせて手足などを動かす神経を運動神経と呼び、意思に関係なく臓器や血管などの働きを調節している神経を自律神経と呼びます。

 自律神経には交感神経と副交感神経があり、交感神経は戦いの神経といわれることがあり、緊張したときや興奮したときによく働き、血管が収縮して血圧が上がり、脈拍や呼吸が速くなります。

 副交感神経はやすらぎの神経ともいわれ、リラックスしたときによく働いており、血管は拡張して血圧は安定し、脈拍や呼吸も落ち着きます。

 これら2つの神経が、いわばアクセルとブレーキのように、バランスよく働くことによって私たちの体は無意識のうちにさまざまな状況に対応しているのです。

 ストレスや生活習慣の乱れ、女性ではホルモンの失調などによって、自律神経のバランスが乱れて不快な症状が現れる状態を自律神経失調症といい、めまい、頭痛、頭重、手足の冷えやしびれ、ほてり、イライラ、不安、動悸(どうき)、不眠などのほか、さまざまな症状を表します。

 自律神経失調症の症状は、検査しても原因となる病気が見つからないので不定愁訴と呼びます。

 病気の原因を科学的に探ることで進化した西洋医学では軽んじられていた不定愁訴ですが、症状と体質を重んじた薬物療法の経験を積み重ねることで発達した漢方では、不定愁訴は病気の人の状態を表す指標になり、治すものとして昔から重んじられてきました。
 
 例えば、肩や背中の症状一つとっても、右肩が凝る、左肩が凝る、肩から背中にかけて凝る、逆に背中から肩にかけて凝る、肩だけが凝る、背中だけが凝るなどと区別し、他の症状を合わせて、全身の状態を把握して適する薬を選びます。

 ですから、自律神経失調症のように不定愁訴が多い病気の改善には、今でも漢方が役に立つことが多いのです。

 一般的に使用する漢方薬の一部を挙げておきます。詳しくは専門家にご相談ください。

●柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう) 体力のある人で、動悸、目まい、不眠、不安などのある人に

●半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう) 虚弱傾向の人で、気分が沈み、不安を感じる人に
 
●逍遥散(しょうようさん) 疲労、肩凝り、不安などを訴える人に。女性に適することが多い 

薬が合えば、長くても2カ月もあれば効果を感じるでしょう。

(北山進三)
posted by なつめ at 16:00| リビング新聞−漢方Q&A−